キックとベース 低域のミキシング

キックとベース 低域のミキシング

ミキシングにおいてまず出る話題のひとつが低域についてでしょう。低域の楽器には主にキックとベースがありますがそのバランスについて困ってる人も多いと思います。今回はその低域にフォーカスをして話をしたいと思います。

キックとベースの音量バランス


Riot – Jungle Fury 1

Riot – Jungle Fury 2

大抵の場合キックの方が大きいまたは同程度の低域バランスが個人的には良いと考えています。キックの方が大きいとドンッドンッと響きやすくリズムが取りやすくノリの良いミキシングになる為です。逆にベースが大きいとベースは基本的にロングトーンが多いためそのロングトーンが楽曲全体を支配してのっぺりしたミキシングになりがちです。

低域のバランスを見るためにはミキサーについているピークメーターよりもアナライザーで低域のピークを見たほうが良いです。ピークメーターは帯域に関係なくその音のピーク値を表示するため低域のみ見たい場合には適切ではありません。

実際にどういう風に見えるのか見てみようと思います。(上画像参照)最近リリースされた「Riot – Jungle Fury」を見てみましょう。(相変わらずRiotの曲がやばい話はブログにはしません)(またSoundCloudの音をそのまま拾っているので広域がガクっと下がっていますが気にしないでください)

この曲の場合、アナライザーでみるとベースとキックの低域のピークはほぼ同じだという事がわかりますね。音量が同程度がそれ以上の場合、アナライザーでキックの波形がわかりやすくて低域がうねうねよく動きます。ベースのバランスを間違えるとベースの山ばかり映ってしまいキックがほぼほぼ見えない状態になります。

Riot – Jungle Furyの低域のもう一つの特徴としてキックとベースの周波数が大きく異なるということです。この話は別項で話そうと思います。

もう一例ジャンルを変えて見てみましょう。最近公開された劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」 Ⅱ.lost butterflyの主題歌「Aimer – I beg you

Aimer – I beg you

この曲はキックの方が大きく出ています。ベースが少し小さめで、更にキックとかぶるスーパーローの帯域もローカットし削られているように聞こえます。しかしベースが聞こえないという訳ではなくしっかり聞こえますね。アナライザーにもしっかりベースの山が現れています。

キックを同程度もしくは大きくした方が、キックがめだちミキシングがまとまりやすいことが伝わったでしょうか。これは個人的見解かつジャンルや曲調によるので必ず正解という訳では無いということは最後に言っておきます。

キックが下かベースが下か

キックとベースどちらがスーパーローを担当するかという話もよく聞きます。私の意見としてはどちらでも良いというどっちつかずな回答になります。

ここで重要なのがどちらかを選んだ場合に、スーパーローの帯域を削るようなイコライジングをしてしまい低域が薄くなるということです。特にキックを上に持ってきた場合の80Hz未満がスカスカのキックはペチペチ言うだけで迫力のないものになってしまいます。次の項で説明しますが、無理やりイコライジングで棲み分けをしようとするくらいならやらない方が良いと思うことが多いです。

周波数帯を分ける必要はない

キックのベースの周波数を分けて区別をつけるという話を聞いた方は多いと思います。実際に上の項で例に上げた曲は両方ともベースとキックのピークが綺麗に分かれていました。周波数帯が分かれているとキックとベースが両方共はっきり聞こえて団子にならず綺麗なミキシングになります。が、無理に周波数帯を分けて音作りをする必要はありません。例に挙げた曲が両方とも分かれているのはたまたま選んだ曲がそうだったってだけです。

まず周波数帯を分けたミキシングは編曲・音作りの段階から拘らないといけません。 例えばRiot – Jungle Furyはかなり低めの40Hz付近で主にサブベースでスーパーローを出して、キックとしては少し高めの周波数の80Hz付近でキックを鳴らしています。ベースがもう少し低いと人間の耳ではほぼ聞こえない音になってきて、キックがもう少し高いと迫力のない薄いキックになってしまいます。絶妙なバランスが考えられて編曲と音作りがされていますね。

そんなのめんどくさい!という人も多いと思います。この項の趣旨である「周波数帯を分ける必要はない」という事について触れようと思います。その方法は簡単で「サイドチェインを用いる」という方法です。

ベースとキックを住み分けるために周波数を分ける話がでますが、それじゃあサイドチェインを用いることでキックが鳴っている時にベースを鳴らさなければ良いじゃんというとても簡単な考えです。例として「Pixel Terror – Arctica」を紹介します。

この曲は非常に分かりやすく深めにサイドチェインがかかっていますね。ベースとキックの周波数はほぼ同じですが、とくに変なだまつきはありません。ベースだけでなくシンセにもかかっていてよりキックが目立つミキシングになっています。

サイドチェインはクラブミュージックだけで使うテクニックではありません。どんなジャンルにおいても有効に用いる事でミキシングがより良くなります。例で紹介した「 Pixel Terror – Arctica 」は非常に深くかけていますが、ロック等では浅くかけたりリリースを速く設定することでサイドチェイン感は出さずにミキシングで各パートの被りを抑える働きをさせる事もできます。使い方次第ですね。

さいごに

今回のまとめとしては

  • ピークメーターではなくアナライザーで低域を見る
  • キックとベースのバランスは同じくらいかキックが大きい方が良い。キック中心のミキシングの方がクッキリとノリが演出できる。
  • キックとベースの周波数帯を分けると両者がはっきりするが、うまく扱うのが難しい
  • そのためキックとベースの周波数帯は無理に分けなくても、サイドチェインをうまく使えばOK

低域のミキシングは特に悩んでいる声を多く聞くので少しでもお役に立つことができれば幸いです。

音作りや中高域との兼ね合いももちろんあるのですが、今回紹介したTipsを参考にして低域のミキシングにチャレンジしてみてください。

あとモニタリング環境も結構響いてくると思いますがそこは「DTMer格付けチェック」等でどんなものか判断してもいいと思います。

それでは今回はここまで!

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