Categories: マスタリング

[雑談]リミッターの使い分けをした話

2019春M3ではたくさんマスタリングのご依頼頂きましてありがとうございます(詳細はこちら)。さてそのM3でのマスタリングで面白いことが後から発覚しまして、実は担当したマスタリングそれぞれで使ったリミッターの種類が違ったのです。わざと違うリミッターを使ってバラバラにしようとしたのではなく、それぞれのアルバムでこういう音が良いだろうなと使い分けた結果たまたま異なるリミッターでのマスタリングになっていました。というわけで今回はM3でたまたま実例ができたリミッターの使い分けについてお話したいと思います。

A.O.M. Invisible Lmiterの場合

Diverse System様の「AD:TRANCE REMIXES 2」、AlphaVersion Records様の「WIRED WAVE」で使用しました。

トランスやベースミュージックは基本的にInvisible Limiterの使用頻度が多いです。Invisible Limiterは音圧を上げるにはうってつけのリミッターです。潰した時の高音域が非常にクリアでハイファイ気味なサウンドに仕上がります。

Invisible Limiterを使用した上記2作品は両方ともガッツリ低音が鳴るクラブミュージックのアルバムだったので、ハイファイで音圧を高くまとめたいという考えにピッタリというわけです。

少し気をつけなければならない部分は、たまに音割れしないだろうなという状況下で音割れしてしまうことです。具体的にはハイ寄りのホワイトノイズやベースが鳴っているときにたまに音割れしてしまいます。そういう場合は、別のリミッターを使ってリミッターを二段掛けにしたり、オートメーションでボリュームを調整したりして対応しましょう。

A.O.M. Invisible Limiter

https://aom-factory.jp/ja/products/invisible-limiter/

Fabfilter Pro-Lの場合

ああ…翡翠茶漬け…様のDream Makersで使用しました。

Pro-Lはサウンドにクセがなくどんなジャンルにも合わせやすいです。サウンドの変化も少なく音圧も上げやすいので、とりあえず悩んだ時はコレという感じで使用しています。

Dream Makersはポップ系やゲーム風な楽曲が多いため、音圧をがっつり上げる必要はありませんでした。サウンドの方向性もがっつり色づけするよりも原音に寄せたほうがよいと考えてPro-Lをチョイスしました。

決して音圧上げが苦手というわけではないので、音圧を上げたい時もPro-Lをしても問題ありません。(現にPro-Lでクラブミュージックのマスタリングをしているという話もよく聞きます)

マスタリング用のリミッターで困ったらとりあえずPro-Lを選んでおけば間違いないかと思います。

Fabfilter

https://www.fabfilter.com/

 

Ozone 8 Maximizer

SILENTRM.NET様の「Rainbow Frontier」で使用しました。実は使い込んでいなかったこのOzone8のMaximizerでしたが、Silentroom氏が普段使用しているということで今回使用しました。

様々なモードが搭載されていますが、今回はIRC IV Transientを使用しております。このモードは音圧が非常に上げやすい上にとてもクリアなサウンドになるためクラブミュージックにうってつけです。Invisible Limiterよりもハイファイ感は少なく、イメージ的にはInvisible LimiterとPro-Lを足して2で割ったような性能です。

Rainbow Frontierの楽曲はどれも2mixが整っており、かつわざわざハイファイにする必要がなく2mixの雰囲気をなるべく変化させずに音量をあげることができました。

Transient Emphasis機能もとても便利で、リミティング時のトランジェントを強調できトランジェントが足りないと感じたときにお手軽に調整できる点でとても優れています。

音圧はがっつりあげたいけど、Invisible Limiterほどハイファイにしたくないなというときに使用してやるとがっちりハマるかと思います。

Ozone 8 Maximizerには様々なモードが搭載されているので、他のモードに関してはその限りではありません。

Ozone 8

https://www.izotope.com/

 

Ozone 8 Vintage Limiter

Diverse System様のworks.9で使用しました。

Ozone 8 Vintage Limiterはその名の通りビンテージリミッターの温かいサウンド感を演出できるリミッターです。歪みやすく色付けも強いためかなりピーキーな性能ですが、この独特のビンテージ感を求める場合には非常に優れたリミッターとなります。

works.9は音圧を上げる必要はなく、聞きやすいアナログ風なサウンドで纏めたいと思ったのでVintage Limiterを採用しました。結果的にかなりきれいにまとめることができたのではないかと自分では思っております。

ただしOzone 8 Vintage Limiterを使用する場合は歪みに細心の注意を払わなければなりません。-12LUFS程度で纏めていましたがそれでも、歪んでしまう楽曲があり、そこに限ってはリミッターを変更したりボリュームオートメーションを使用したりで対応しました。

とにかく音はめちゃくちゃ良いので使う機会があれば一度試してみてほしいリミッターです。

Ozone 8

https://www.izotope.com/

 

さいごに

実例を交えながらそれぞれのリミッターの使い分けについてお話しました。

細かいサウンドに興味がある方は、CDを手にとってどういう仕上がりになったか聴き比べてみては如何でしょうか。

あくまで個人的の主観的な使用感が色濃く反映されていますので参考程度にとどめていただければ幸いです。

purureko

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