マスタリングのコンプレッサーは非常に難しいエフェクタですが、効果的に使うことができると曲にまとまりを持たせたりキャラクターを加えることが出来ます。マスタリングに適したコンプレッサーやその設定について書いていきたいと思います。
コンプレッサーでの音の変化は非常に分かりにくい上に、音によって変化の仕方が異なります。その変化を捉えた上でどのように使っていけば良いのか例を用いて説明してみたいと思います。
まずは2つのオーディオファイルをお聞き下さい。
Comp Off:
Comp On:
私の曲の2mixを用いて、コンプレッサー有無を比較しました。違いがわかりましたでしょうか?
Comp OnはOffと比べると低域がタイトになり2mixにまとまりが出ているかと思います。
じゃあこのComp Onの音が正解かというとそうでもありません。今回は比較のために少し強めにコンプレッサーをかけたため、コンプ感が強く出てしまっています。私ならスレッショルドを少し上げるか、Dry/Wetを80%にするといった調整をします。
ここで紹介したのはあくまで一例です。それぞれの曲でコンプレッサーがどのように作用しているか把握して初めてコンプレッサーを使用するか否かを判断すると良いでしょう。
余談ですが、この違いがわからない場合はモニター環境を見直してみてもいいかもしれません。
参考に上で使用したコンプレッサーの設定を載せておきます。繰り返しになりますがこれが正解ではありません。曲によっても、コンプレッサーの種類によっても最適な設定は異なってきます。注意して下さい!
Attack:マスタリングで用いる場合、アタックはあまり早くないほうが良いケースが多いです。20~70msあたりを目安に設定してみて下さい。
Release:速ければパンチのある音を生み出しやすいですが、ポンピング現象を生む可能性があります。また長すぎるとのっぺりした音になりグルーブ感を失う原因にもなります。
Ratio:Ratioの数値を多くするとよりパンチの効いた音になりますが、個人的にマスタリング段階であまりRatioを上げることはありません。例で上げたコンプレッサーの最低値は2ですが、1.5やそれ以下でも十分な効果を得ることができます。もしクラブトラックのマスタリングでダイナミクスがありすぎて音にまとまりが出ていない場合には高い数値を設定するかもしれません。
Threshold:マスタリングでは通常浅く掛けるのが基本となります。私の場合はリダクションメーターが2~5dbを示すように設定することが多いです。
その他の設定は割愛します。
コンプレッサーはその種類によって掛かり方がまったく変わってきます。その特性を理解せずに使用してしまうと曲を壊してしまう可能性すらあるので注意しましょう。
今回の例で使用したコンプレッサーはAbleton Glue CompressorといいSSL Bus Compをシミュレートしたコンプレッサーです。SSL Bus Compというのが非常に掛かり方が自然で透明感のある音になります。マスタリングにうってつけですね。
極端な例になりますがNI VC 160を使用した例を紹介しておきます。
アタックパツーン!ダイナミクスグワァン!という感じですごい変化してますよね。Mixでドラムやギターに使うならとても気持ちい音になりそうですが、マスタリングでの使用は難しそうですね。
コンプレッサーそれぞれの特徴をここで紹介するのは難しいですが、もしコンプレッサーの種類に興味が出たならば、自分好みのコンプレッサーを探してみては如何でしょうか?